みなさんこんにちは!
さて、今回は、建築学科卒業生が、グッドデザイン賞2021を住宅で受賞した、という情報を得ました。
松下一樹さん(22期生荒木研92卒)です。早速連絡を取りまして、インタビューさせていただきました!
市原:松下さんはじめまして。この度は受賞おめでとうございました。
松下:市原さんはじめまして。ありがとうございます! お祝いのお言葉をいただいてとてもうれしいです。
市原:受賞は2021年ということで、これはグッドデザイン賞の方から連絡があったのですか?
松下:いえ、グッドデザイン賞は当初は審査員による推薦形式でしたが、途中から公募形式になりましたので、応募した結果、うれしいことに受賞の運びとなりました。
市原:このGOOD DESIGN AWARDのサイトを見ますと、概要のところに「丸裸の家である」とあり、またその理由も記載されていますね。
松下:これまで設計活動と平行して既存住宅の耐震診断・耐震改修もやってきました。お住まいの方がせっかく耐震診断をして、その後耐震改修をしようとしても、診断の費用は自治体の補助金もあり少額ですが、改修のための工事費は高額になることが多く、改修そのものを断念してしまうケースに何度も立ち会ってきた経験からきています。
耐震改修をしようと思ったら、一般に流通している木造住宅の場合は、内壁や床や天井を取り払わないとそれらの内部にある構造の補強工事そのものができないことがほとんどです。耐震のための構造補強の費用の上に、既存の床・壁・天井の取り壊しと、その後の新しい床・壁・天井の施工、さらに床のフローリングや壁・天井の(ビニール)クロスなどの仕上げの工事費用も必要になってきます。
場合によっては工事中の仮住まいの家賃や、家具を一時的に戸外で保管するためのトランクルームの賃料も必要になります。古い家の耐震改修をしようと思う方は年配の方が多く、年金生活の方も多くいらっしゃいますので、日々の暮らしや将来のための貯蓄以外の耐震改修という思わぬ出費は、とても成し難いのが現状と思われます。
一生に一度の高額な買い物として思い切って購入した家が、まさか地震で壊れるかもしれないとこれほど頻繁に思うことになるなんて、購入当時は思いもよらなかったのではないでしょうか。
もともと大掛かりなリフォーム(リノベーション)・改築をするつもりで資金を用意していらしたのであれば、耐震のための構造補強等の費用自体は全体に占める割合が低くなるので比較的実現し易いと思われますし、実現したケースもあります。
市原:同じサイトの「背景」「経緯とその成果」欄にも書かれていますが、更新とか交換の簡易さというのは魅力ですね。
松下:ありがとうございます。これも先の話の耐震改修と同じで、更新も交換も、場合によっては既存の床・壁・天井などを一度取り壊してから行い、その後それら壊した床・壁・天井を新しく作り直す費用が余計に必要になってしまいます。それがネックとなり、結局それらを行わないという、お住まいの方にも住宅そのものにもよろしくない事態になってしまうこともありますので、それらを解決できたらいいなと、いつも思っていました。
市原:あと、「丸裸にしてウソのない家にしようと考えた」というコメントはすてきだと思いました!
松下:これも本当にいつも思っていることで、良いものを作ろうと真面目にがんばっている住宅・建築産業全体のイメージを、建物のありのままをさらけ出すことでより良いものにできたらと思いますし、お住まいの方にご自身の家のすべてを包み隠さず知っていただきたいです。
現在の建築物はその形式・様式上どうしても隠れてしまう部分がありますが、それも含めて知っていただけたらと思っています。方法はいろいろあっていいと思います。
市原:構造設備の面で、機能性や経済性を重視した建築は、大胆かつ実用的であると思いましたが、グッドデザイン賞といったデザイン面で評価されたことについての感想はいかがでしょうか?
松下:実は、審査員の方々から「美しさへの追求も感じられる」と評価していただいたことが何よりうれしいです。審査資料ではそのことに関して一切アピールしなかったのですが、こうした評価をいただき大変光栄です。設計者として、建物の美しさを追求することは求められなくても当たり前に必要なことと考えていますので、審査員の方々に本当によく見ていただいたと感謝しています。
またデザインとは、意匠だけでなく広く設計全般を意味しますので、構造設備の面での機能性や経済性も設計=デザインとして評価してくださったことがうれしいです。
市原:審査委員の評価という欄がありますが、このサイトに掲載されている他に、審査委員の方からなにか評価書のようなものが送られてきたりしますか?
松下:少なくとも私にはありませんでした。あの欄に書かれていることがすべてで、私にとっては身に余るご評価をいただき大変光栄です。
市原:実際のお施主様の評価はどんな感じですか?
松下:とても喜んでくださっています。お子さんがこの家を気に入ってくださっているそうです。直接お聞きしました。設計者として、こんなにうれしいことはありません。外断熱だったり床暖房があったり、日当たりも良い設計なので、見た目より快適なんです。
市原:関大建築卒業生の活躍は、現役生にも、これから入学する人にもとても励みになると思います。
松下:私がと思うと誠に恐縮ですが、その一助となりましたら幸いです。私も現役生時代に先生方や先輩方の言動やご活躍に触れて大変刺激・励みになりました。
関大建築学科の現役の学生さんも、これから入学する方も、今後のご活躍をお祈り申し上げます。在学中にチャンスがあればコンペやコンテストに是非どんどんチャレンジしてみてください! 仮に失敗しても必ずプラスになります。失敗していいんです。失敗は成功のもとです。あきらめないで続けてください。結果は二の次です。私も「やらないで後悔するよりやって後悔しよう」と応募したら受賞しました。仮に受賞しなかったとしてもやり切った結果であれば後悔は少ないでしょう。ただし、めちゃくちゃくやしいですけどね。
市原:最後に千里山建築会へのメッセージなどいただけますか?
松下:このたびは貴重な機会をくださいましてありがとうございました! こうして関大建築学科卒業生・現役生の輪が内外に広がっていくことを期待しています! 建築業界に関大建築学科生あり!となればうれしいですね。
ありがとうございました。松下さんへの連絡はこちらからどうぞ!
関西大学校友会Facebook‐松下さん受賞の記事
いかがでしたでしょうか?建築学科の卒業生の方は、様々な活躍をされていますね。今後も情報交換の場所としてこのページが活性化できればいいな、と思います。
今回の投稿は以上です。次回をお楽しみに!
この投稿は2022年5月の総会で、私、市原が会長に推薦された際、所信表明で「HP活用のために任期中に100本の投稿をする」と発言したことに基づく企画であります。
本企画の記事は以下1~4のいずれかを満たす投稿としています。
- 会則の目的に「会員相互の親睦を図る」とあり、卒業生にできるだけ有用な情報を提供すること
- 同じく「関西大学建築学科の発展に寄与」するため、現役学生と卒業生をつなぐ情報であること
- 同じく「建築に関する学術・技術の進歩発展に寄与」するための情報であること
- 「建築」という単語を入れること
20220907