ひっそりと余生を送る橋梁

20期 井上寿也

建築物ではなく土木構造物なのですが、これまで実際に訪れて印象深かったものの1つにタウシュベツ橋梁というのがありますので、こちらをご紹介します。

今は廃線となりましたが、北海道の帯広から糠平温泉を通り、十勝三股駅まで結んでいた国鉄士幌線というのがありました。この橋梁は、糠平ダム建設のために、昭和30年にダム湖の中に水没した士幌線のコンクリートアーチ橋なのです。それが、季節によるダムの水位の変化のため、水没したり姿を現したりを繰り返した結果、このような、大変趣のある姿になったというわけです。

私が訪れたのは9月初めで、もう少し遅いと水没するそうなのですが、この年は何とか見ることができました。年月とともに自然に朽ちた姿がまわりの風景とうまくマッチングして、都会の時間に追われたひとときを忘れさせてくれます。同じ環境下で白くなった木の切り株が周囲にあり、この絶妙な風景をさらに引き立てています。できれば、1度冬に訪れてみたいものです。

現地への林道は一般車両通行禁止で、熊も結構でるそうなので、地元のNPO法人の方が有料で案内してくれます。

残念ながら、この橋梁も地震や経年劣化のため損傷が激しくなっており、いつ崩壊するかわからない状況です。しかし、ここまで、自然に任せて朽ちてきたのですから、あえて手を加えて延命させず、自然の流れの中でなくなっていくのは、この橋梁にとってよい形なのかも知れません。

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